DOHaD研究
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妊娠期の葉酸サプリメント摂取と児の喘息発症リスクとの関連
金高 有里 小林 道土肥 聡荻原 重俊
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2021 年 10 巻 1 号 p. 69-75

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抄録

【目的】我が国では、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性及び妊娠初期の妊婦は、通常の食品から摂取する葉酸以外に、サプリメントや食品中に添加される葉酸(狭義の葉酸)を400 ㎍/日摂取することが望ましいとされている。受胎期に重要な葉酸サプリメントの摂取が普及する一方で、海外において母親の葉酸過剰摂取による児の喘息発症のリスクが報告されている。そこで本研究では日本における妊娠期の葉酸サプリメントの摂取と児の喘息発症リスクとの関連を検討した。 【方法】2014年7月から8月に、北海道札幌市、石狩市の計17か所の保育所に通う児童の保護者589人を対象に、児の性別と月齢、児の喘息の有無と発作頻度、児のRSウイルス罹患状況、両親の喘息の有無と発作頻度、両親の喫煙歴、妊娠前および妊娠20週まで(妊娠前半期)と 21 週以降(妊娠後半期)のサプリメントによる葉酸摂取状況について自記式質問紙調査を行った。解析対象は、児の性別、児の月齢、喘息の有無、妊娠期の葉酸サプリメント摂取の有無について欠損が無かった305人(51.8%)とした。 【結果】多重ロジスティック回帰分析の結果、葉酸サプリメント非摂取群と比較した摂取群の喘息有症の調整オッズ比は、4.54(95%CI: 1.20-17.30)であった。 【考察】本研究では、妊娠期の葉酸サプリメント摂取と喘息の罹患に正の関連が見られた。妊娠期に葉酸サプリメント摂取が無かった群と比較して、葉酸サプリメントを摂取していた群で喘息の有症率が高かった。葉酸摂取を否定するものではないが、本研究の結果から、葉酸サプリメントの摂取は、児の喘息発症のリスクであることが示された。

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