DOHaD研究
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DOHaD学説からみたネフロン数と高血圧・慢性腎臓病の進展
野林 大幹神崎 剛 坪井 伸夫横尾 隆平野 大志
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2023 年 11 巻 2 号 p. 37-45

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抄録
ヒトの腎臓は, 糸球体と尿細管から成る最小構成単位ネフロンがおよそ100万個集結することで構成されている. そのため, 慢性腎臓病 (Chronic Kidney Disease; CKD)の原因は多岐にわたるが, 原因が何であれ, ネフロン数が減少する病態ととらえることができる. CKDは心血管疾患や死亡の原因となる上, その患者数は年々増加しており新たに「ネフロン数」に着目した対応が求められる. ヒトのネフロンの発生は胎生36週目までに完了し, 出生後新たにネフロンが形成されることはない. 最近の研究により、このネフロン数は13倍の個人差が報告されており, この出生時のネフロン数こそ潜在的なCKDのリスク因子といえる. 出生時体重と総ネフロン数の間に正の相関が認められることから, ネフロンの形成には母胎環境が大きく影響することが示唆され, その要因として母親の栄養状態, 微量栄養素, 喫煙・アルコール, 薬剤の使用, 母親の腎機能障害や耐糖能異常が挙げられる. 医療が進歩し, 日々新規薬剤が登場する中, 増加の一途をたどるCKDを予防する上で, DOHaD学説に基づき, 出生前の母親への適切な指導や低出生体重児や腎臓の発達が未熟な患者への早期介入が重要となる.
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© 2023 一般社団法人日本DOHaD学会
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