DOHaD研究
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Fetal Origins of Obesity -超音波を用いた新たな胎児発育評価-
池ノ上 学
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2024 年 12 巻 1 号 p. 25-29

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抄録
【背景と目的】出生体重は周産期予後の重要な予測因子であるだけでなく,児の長期予後とも関連する.ヒト新生児は他の哺乳類と比較して体脂肪率が高く,新生児期の体脂肪率高値が小児肥満とも関連することが知られている.一方で,胎児肝臓は脂質の主な合成・分解の場であり,肝血流量の増加により脂質代謝関連ホルモンの分泌量が増加することが動物実験で明らかとなっている.また,Corticotrophin releasing hormone(CRH)は血管拡張作用を有し,妊娠後期に胎盤から分泌量が急激に上昇する.今回,ヒト胎児における肝血流量と新生児体脂肪率との関連,およびCRHが胎児肝血流量に与える影響について検討を行った. 【対象と方法】正常単胎妊婦62例を対象として,妊娠30週に胎児肝血流量を計測した.交絡因子を考慮した上で,重回帰分析を用いて胎児肝血流量と新生児体脂肪率との相関について解析した. また,妊娠12週,20週,30週に母体血清中のCRHを測定し,CRHと胎児肝血流量の相関について検討した. 【結果】妊娠30週における胎児肝血流量は,新生児体脂肪量および体脂肪率と有意な正の相関を示し,筋肉量や出生体重とは相関しなかった.また妊娠12週と妊娠20週のCRHは胎児肝血流量と相関しなかったが,妊娠30週のCRHは胎児肝血流量と有意な正の相関を認めた. 【結論】胎児肝血流量は新生児体脂肪率に影響を与え,またCRHにより調節を受けることが明らかとなった.胎児肝血流量やCRHが,新生児期さらには小児期の肥満に対する一次予防を目指す上で,重要な指標となる可能性が示唆された.
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© 2024 一般社団法人日本DOHaD学会
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