DOHaD研究
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モルモット雄性生殖細胞エピゲノムを介した形質の伝達
濱田 裕貴 齋藤 昌利Matthews Stephen G
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2024 年 12 巻 1 号 p. 47-52

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抄録
胎児期の様々な環境曝露が出生後から成人に至るまでの種々の疾患発症に関与するというDevelopmental Origins of Health and Disease(DOHaD)学説は、現在広く支持されており様々な分野で研究が行われている。近年では妊娠前の環境曝露や次世代以降への影響なども広義のDOHaD学説に含まれている。特に、妊娠中の影響は次世代だけではなく多世代に渡って伝達されうることがヒトや動物モデルの双方で明らかになっている。我々の研究室で行った動物モデル(モルモット)を用いた先行研究においても、出生前母体ステロイド投与が、子孫三世代に渡りメス仔の神経行動学的な異常と脳前頭前皮質の遺伝子発現変化を引き起こすことを明らかにした。世代を超えて表現型が伝達される機序には、生殖細胞のエピゲノムを介したメカニズム、とりわけオス生殖細胞に含まれるマイクロRNA (miRNA)が、父系形質伝達に関与しているという報告が相次いでいる。そこで、オス生殖細胞に含まれるmiRNAに着目し解析を行った。その結果、共通するmiRNAが複数世代で変動していることが明らかとなった。これらのmiRNAは、脳神経内分泌的な機能や神経行動学に関与しているものとして知られている。以上の結果は、妊娠中のステロイド曝露が、生殖細胞のエピゲノム変化という機序を介して子から孫へ伝達され、行動異常という表現型に関与していることを示唆している。一方で、miRNAが生殖細胞で発現変化を受け、世代を越えて伝わっていく機序解明については、さらなる研究が必要である。
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© 2024 一般社団法人日本DOHaD学会
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