抄録
動脈硬化症は日本人の死因において悪性新生物に次ぐものとなっている。動脈硬化症のリスク因子には生活習慣に関連するものや高コレステロール血症、糖尿病といった疾患群が挙げられる。加えて低栄養などの胎児期からの環境因子も発症リスクとなっている。動脈硬化症の克服のためには、成人後の対策のみならず胎児期からライフコースを俯瞰した対策が必要となり、Developmental origins of health and disease (DOHaD)の観点からライフコース全体をみた研究が必要である。そこで、出生コホートを基盤とした研究が重要となってくる。日本において行われている大規模出生コホートとしては、エコチル調査があり、そのフォローアップ期間が参加児が40歳程度になるまでと延長されたことから動脈硬化症の研究における成果が期待される。DOHaDメカニズムという点ではエピジェネティックな機序が想定されるが、出生コホートはこの点にもアプローチが可能である。本稿では動脈硬化症の研究における出生コホートの持つ可能性について考える。