抄録
【目的】Developmental Origins of Health and Disease (DOHaD) 学説と日本の出生コホート研究の最新成果について、周産期医療に関わる助産師等の看護職の認知度と、看護職が考える望ましい啓発方法を明らかにすることを目的とした。
【方法】日本の出生コホート研究のひとつである「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に調査協力している3医療施設と1大学で調査を行った。エコチル調査成果は、我々が任意に選択した38編の論文(テーマ)概要を紹介した。調査は2023年3月~6月に実施した。
【結果】研究参加人数は、エコチル調査の協力医療施設で研究協力または被験者で参加した看護職(協力参加あり群)39人、エコチル調査等に協力・参加した経験のない看護職(協力参加なし群)49人、大学助産師養成課程の学生18人。DOHaD学説を知らなかった割合は、協力参加あり群56.4%、協力参加なし群63.3%、学生66.7%であった。エコチル調査成果を全て知らなかった割合は、協力参加あり群71.8%、協力参加なし群81.6%、学生88.9%であった。エコチル調査成果を3テーマ以下しか知らなかった(全て知らなかったを含む)割合は、協力参加あり群94.9%、協力参加なし群93.8%、学生100%であった。上記すべての質問項目における認知度は、協力参加あり群と協力参加なし群のロジスティック回帰分析による比較では、有意差はなかった。参加者全体の意見で望ましい啓発方法の上位3つは、病院での研修会(84.9%)、地域での研修会(60.4%)、医療系誌(50.9%)であった。
【結論】エコチル調査の協力医療施設で周産期医療に関わる看護職の約6割がDOHaD学説を知らず、9割以上がエコチル調査成果を「全て知らない」あるいは「1~3テーマ」しか知らなかった。看護職の意見として最も望ましい啓発方法は「病院での研修会」であった。