日本土壌肥料学雑誌
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日立市および日立市周辺市町村の道路わき粉じんおよび土壌の重金属分布
久保田 正亜折笠 清人浅見 輝男
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1986 年 57 巻 2 号 p. 142-148

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抄録

環境の重金属汚染の実態を明らかにする研究の一環として,茨城県下の工業都市である日立市および日立市周辺市町村の道路わき粉じんと土壌を採取し重金属の分析を行ない以下の結果を得た。1)日立市道路わき粉じんの平均重金属含有率は日立市周辺市町村の重金属含有率よりも高く,非汚染土壌の平均重金属含有率と比べカドミウム,亜鉛,鉛,銅で高かった。とくに銅は非汚染土壌平均値の34.4倍,東京都区部土壌平均値の9.1倍と著しく高かった。2)日立市道路わき粉じんの重金属含有率を主要道路別に比較すると,国道6号から国道349号に至る県道と国道245号で高かった。このことは日立鉱山,製錬所を含む県道沿いの工場および国道245号沿いの工場が汚染源と考えられる。3)日立市土壌の平均重金属含有率は,非汚染土壌平均値とカドミウム,亜鉛,鉛,銅で高く,これらの重金属により汚染されていることが明らかとなった。汚染の程度は東京都区部土壌と同様の程度であった。ただし製錬所近くの土壌中には著しく高いカドミウム,亜鉛,鉛,銅が含まれていた。4)以上の結果から,日立市は銅により著しく汚染されており,カドミウム,亜鉛,鉛によっても汚染されていることが考えられる。

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© 1986 一般社団法人日本土壌肥料学会
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