抄録
八郎潟干拓地の輪換水田における土壌の変化、水稲による窒素吸収パターンの特徴などを、水稲を連作した場合と対比させて検討し、以下の結果を得た。 1)低湿重粘土壌においても、輪換水田は酸化的な土層が連作水田に比べて厚く、下層土は構造が発達し、気相割合が増加していた。しかし、グライ層の出現位置は、水稲1作ごとにはぼ10cmずつ浅くなった。 2)輪換水田は水稲根域が連作水田に比べて浅く、その活力も高かった。3)水稲の窒素吸収量は、輪換2年目水田までは連作水田より優り、特に幼穂形成期以降成熟期にかけての増加量が多かった。基肥窒素の利用率は、輪換1年目水田37.5%、連作水田21.3%であった。 4)総籾数との収量トの関係では、連作水田では38,000粒/m^2で収量の頭打ちがみられるのに対して、輪換1年目水田では籾数の増加に伴う登熟歩合の低下が少なく、45,000粒/m^2程度までは、籾数の増加に伴って増収していた。以上のことから、八郎潟干拓地の低湿重粘土壌における田畑輪換は、土壌および水稲生産力に大きな変化を与える有効な土地利用方式であることが認められた。