抄録
本研究の目的は,グルコサミンの高等植物体内における生理機能の一つを明らかにすることである.本報告では,まず,上記目的のための予備実験として,植物からのグルコサミンの単離,同定,および定量方法について検討した結果,有効な方法が得られたので,その詳細について述べた.ついで,トマト,ハツカダイコン,オオムギおよびトウモロコシ幼植物をを供試し,窒素,リン,カリウム,カルシウム,亜鉛の各種要素欠除処理とグルコサミンとの関連を調べ次の結果を得た.1)冷水抽出,SDS抽出およびSDS不溶性の各画分にグルコサミンが存在した.2)カリウム欠除,カルシウム欠除,亜鉛欠除の各区について,グルコサミン含量は,いずれも高い傾向が認められた.3)窒素欠除区でのグルコサミン含量は,対照区に比べやや高いかあるいは同程度の値を示した.4)どの植物においても,各種要素欠乏により,対照区に比較して,おおむね冷水抽出性グルコサミンの割合が減少し,冷水不溶性(SDS抽出性+SDS不溶性)グルコサミンの割合が増大する傾向が認められた.以上の結果から,とくにSDS不溶性画分におけるグルコサミンは,各種の生体構成成分を関連して存在しており,このため外的栄養条件の影響を受けにくいのではないと推察される.