抄録
K,Ca,Mgの3栄養カチオンが水稲種子根の初期Cd吸収およびCdの呼吸毒性に与える影響について,Cdとこれらのカチオンの濃度および共存させるカチオン種の組合せを変えて検討を行い以下の結果を得た.1)Cd単独処理における経時変化の検討を行ったところ,2〜4時間にわたり速やかな吸収速度の低下およびCd含有率の速やかな上昇が認められた.その後は両者ともに定常状態となり,それらのレベルは外液Cd濃度に依存していた.呼吸速度の低下曲線とCd含有率の上昇曲線との間にはきわめて良好な対応性が認められた.2)上記結果に基づき,呼吸速度およびCd含有率がCd処理に鋭敏に反応しつつある処理1時間後の根についての値を計測し検討を行った.共存カチオンの当量濃度がCdを上回ると初めてCd吸収抑制作用および吸収毒性軽減効果が発現され,その濃度差が大きくなるほど強くなった.3)呼吸速度は,共存カチオンの有無や組合せとは無関係にもっぱらCd含有率に依存していた.したがってカチオン共存による呼吸毒性軽減の作用機作はCd吸収抑制によるものと推察される.4)単カチオン共存の場合,Cd呼吸抑制作用にはCa>Mg>Kの序列が示された.また2カチオンおよび3カチオン共存では,そのなかにCaが含まれるとCd吸収抑制にきわめて効果的であることが認められた.5)2カチオン,3カチオン共存処理で共存カチオン中のCaの割合が1/2あるいは1/3であっても,すべてをCaで占める場合と同様のCd呼吸抑制作用を示すことが見積もられ,Caとの複合によりKやMgでもCaと同等の作用を示すことが認められた.