日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
稲わら表面施用に伴う土壌からの無機・有機養分の放出と生物的窒素固定活性
兪 益東木村 眞人和田 秀徳高井 康雄
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1990 年 61 巻 6 号 p. 579-585

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抄録

光合成窒素固定微生物の活動は田面水に溶解している無機・有機養分の量によって影響を受けていると予想される.一方,これら無機・有機養分は,土壌自身と土壌に施用された物質から供給されている.この考察に基づいて,本報では稲わらの表面施用が土壌と稲わらから田面水へ供給される各種物質に及ぼす影響を検討し,それら物質の供給と窒素固定活性との関係を調べた,得られた結果は以下のとおりである.1)稲わらの表面施用によって,酸化層の形成が妨げられるとともに,還元層の発達をもたらした.また,これに伴って,田面水のpHが1.0〜1.5程度上昇し,光合成窒素固定微生物の成育に適した値を維持した.2)稲わら無施用区に比べ,稲わら表面施用区では,土壌から田面水へ第一鉄とリン酸が多量に供給された.3)稲わら表面施用により,稲わらの成分ないし稲わらの微生物分解産物である水溶性糖類が多量に田面水中に集積した.4)稲わら無施用区に比べ稲わら施用区では,田面水中のCO_2濃度の増加,O_2濃度の減少,CH_4の生成などが認められた.5)以上のように,稲わらの表面施用は田面水への各種有機・無機養分の放出を促進し,光合成細菌とらん藻の増殖とともに窒素固定活性の増加に大きく寄与していると判断された.

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© 1990 一般社団法人日本土壌肥料学会
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