日本環境感染学会誌
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原著論文
抗酸菌およびそのバイオフィルムに対する次亜塩素酸ナトリウムと二酸化塩素ガス溶存液の殺菌効果
西内 由紀子田丸 亜貴戸谷 孝洋
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2015 年 30 巻 4 号 p. 243-248

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抄録

  塩素系消毒剤の次亜塩素酸は水やプールの消毒に使用され,二酸化塩素ガス溶存液は次亜塩素酸より低濃度で微生物を殺菌することが知られている.非結核性抗酸菌のMycobacterium avium subspecies hominissuis(MAH)は水道や浴室でバイオフィルムを形成する.MAHは環境から経口感染して播種性MAH症を,経気道感染して肺MAH症を引き起こす.したがってこれらの消毒法の確立は急務であるが,バイオフィルムに対する効果はあまり知られていない.そこでMAHのバイオフィルムに対する塩素系消毒剤の殺菌作用を液体中の浮遊菌と比較した.浮遊MAH菌(約105 CFU/mL)は結核菌やM. kansasiiよりも消毒剤に抵抗性を示し,検出限界以下まで殺菌するには次亜塩素酸ナトリウム1000 mg/L 5分間または100 mg/L 30分間要した.同様に二酸化塩素ガス溶存液は10 mg/L濃度5分間曝露で検出限界以下まで殺菌した.96ウェルプレートに形成されたMAHのバイオフィルムは,108–109 CFU/wellまで菌数が増加した.これらに対して次亜塩素酸ナトリウム1000 mg/Lは30分後に約90%の菌を死滅させるにとどまった.一方,二酸化塩素ガス溶存液100 mg/Lは10分後に99.99%殺菌し,30分後には対数減数値5–8を示した.完全に殺菌できないことから浴室等のMAH除菌効果はさらに検討する必要がある.また環境菌に対する消毒剤の評価はバイオフィルムを考慮する必要がある.

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© 2015 一般社団法人 日本環境感染学会
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