1990 年 61 巻 6 号 p. 614-621
本研究はYOSSEFとCHINOの開発したRhizoboxを用いて添加微量元素と窒素量の変化によるコムギ根圏の元素の挙動について検討したもので,次の結果を得た.1)pHは各処理区とも根に近くなるほど低下した.その範囲は根から2mmまでであった.窒素多施用区の根圏土壌のpHは他の区より低く,根近傍での土壌pHは非根圏土壌に比べて2.5ほど低下した.2)根圏における全銅,全亜鉛,全鉄,全マンガン,全マグネシウムは大きな変化がなく,全カルシウムは根近傍でやや増加し,影響の範囲は1mmまでであった.3)根圏における可溶性カチオンの分布はそれぞれ異なった.可溶性マンガン,可溶性鉄,可溶性カルシウム,可溶性マグネシウム,水溶性ナトリウムは各処理とも根圏に近いほど高く,水溶性カリウム,水溶性アンモニウムは根に近くなるほど低かった.しかし,水溶性カリウムは窒素と微量源元素の添加区では根の生育区画で再上昇した.可溶性銅,可溶性亜鉛はN1区の根圏でやや増加したが,他の区では銅添加のコンパートメントが最も高く,その両側で低下した.