日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
筑波における樹冠雨の化学的性状と樹種間差
渡邊 浩一郎岡木 玲子大嶋 秀雄藤井 國博嶋田 典司
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1993 年 64 巻 4 号 p. 402-407

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抄録

樹冠雨の調査から降雨の酸性化を予測することが可能な樹種を選定するための基礎的データを得るために,12種類の樹木(ヒマラヤスギ,サイカチ,シラカシ,サワラ,アカシア,ドウダンツツジ,コデマリ,レンギョウ,アベリア,スギ,ヒノキ,アカマツ)を対象に樹冠雨のpHと成分濃度の調査を行い,樹種間差を検討した.樹冠雨のpHは4.97〜5.88と,すべての樹種で地表雨のpH(4.65〜4.79)より高かった.また,単一降雨で地表雨よりも低い場合が観測されたヒマラヤスギ,ヒノキ,サワラ,アカマツおよびスギのpHは4.97〜5.37と,調査した樹種中では低い値を示した.樹冠雨の成分濃度は,アベリアのアンモニウムイオン濃度が地表雨とほぼ等しかったほかは,調査した樹種において全項目とも地表雨よりも高かった.なかでも,カリウムイオン濃度はサイカチ,レンギョウ,アカシア,アベリア,ドウダンツツジ,コデマリで地表雨の約11〜34倍と他の成分濃度に比べて著しく高かった.また,シラカシを加えたこれら7樹種のpHは5.36〜5.88と調査した樹種中では高かった.ヒマラヤスギ,ヒノキ,サワラ,アカマツおよびスギの成分濃度比には,成分間で大差はみられなかった.

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© 1993 一般社団法人日本土壌肥料学会
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