日本土壌肥料学雑誌
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中国東北部における各種水田土壌の断面形態と理化学性
江 耀宗李 喬木松本 聰
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1993 年 64 巻 4 号 p. 408-416

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抄録

中国東北部における三種類の水田土とそれに対応する畑土壌について,土壌断面形態および土壌理化学性を調べ相互に比較した.結果は次のように要約される.1)水田土壌化作用により,対応する畑土壌に比べ,湿草地土型水田土の作土層・鋤床層では灰色化が進行し,斑紋が生成していた.レシベ土型水田土の作土層・鋤床層では,灰色化が同様に進行し,大量の斑紋がみられた.暗褐色森林土型水田土では水田土壌の生成的特徴はほとんどみられなかった.供試土壌の下層土はいずれも畑土壌の心土層の特徴を保持していた.2)供試水田土の作土層のシルトおよび粘土含量は,湿草地土型および暗褐色森林土型水田土では,それぞれに対応する畑土壌に比べてこれらの含量が多かった.レシベ型水田土では,対応する畑土壌に比較して,シルト含量が多かったのに対して,粘土含量がほぼ同程度であった.下層土への移動集積はみられなかった.作土層のシルト・粘土の増加は水田土壌化作用により作土層の酸化・還元の反復と凍結・融解による物理的風化の影響と考えた.3)三種類の水田土壌の作土層の容積重および固相率は対応する畑土壌よりも大きかった.これは土壌の有機物含量が少なく,湛水後の代かきによる土粒子分散とち密化のためと考えた.4)湿草地土型水田土の作土層・鋤床層の交換性塩基含量および陽イオン交換容量は対応する畑土壌よりもやや多いのに対して,レシベ土型および暗褐色森林土型水田土では逆にやや少なかった.5)供試三種類の水田土壌では,遊離鉄の溶脱集積は認められず,マンガンの移動集積がやや認められ,アルミニウムの溶脱移行は認められなかった.

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© 1993 一般社団法人日本土壌肥料学会
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