日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
ダイズ根に存在するダイズ根粒菌増殖阻害物質の精製
小沢 隆司辻 剛宏
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 65 巻 6 号 p. 654-659

詳細
抄録

発芽後30日目のダイズ(Glycine max L. 品種タマホマレ)の根の80%メタノール抽出物から,ダイズ根粒菌(Bradyrhizobium japonicum 138 NR) の増殖阻害活性を示す物質を精製した.根粒菌の増殖は酵母エキス-マンニトール希釈液体の濁度の増加で評価した.メタノール抽出物からn-ブタノール分配,シリカゲルカラムクロマトグラフィー,セファデックス LH-20 カラムクロマトグラフィー,および分別結晶法により根粒菌増殖阻害物質を精製した結果,新重量500gのダイズ根当たり2.6mgの白色粉末物質を得た.この物質は,その IR, UV, ^1H-NMR, MS ,および蛍光スペクトルから4' 7-dihydroxyisoflavone(デイジーン)の IR ,UV , ^1H-NMR ,MS ,および蛍光スペクトルを検討した結果,この物質とまったく一致した.よって,精製した根粒菌増殖阻害物質はデイジーンと結論した.接種前の菌体およびバクテロイドのどちらの形態の根粒菌も,1 μM 以上のデイジーンによって,培地中での増殖が抑制された. ED_<50> は約 2 μM であった. 50 μM のスペルミジンを添加した培地と同様にデイジーンによって増殖阻害を受けたが,一方,バクロテロイドの増殖は 10μMのデイジーンでも阻害されなかった.

著者関連情報
© 1994 一般社団法人日本土壌肥料学会
前の記事 次の記事
feedback
Top