日本土壌肥料学雑誌
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培地カルシウム濃度の違いがキュウリ, コマツナの生体液のカチオン・アニオン濃度におよぼす影響
北村 秀教米山 忠克
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1994 年 65 巻 6 号 p. 660-669

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抄録

作物の生体液の養分濃度の変化から栄養生理や栄養診断の情報を得ることを目的とした.ここでは培地の Ca 濃度を 2 mM と 7mM に変えてコマツナと節木キュウリを水耕栽培し,両作物の導管液や作物下位と上位の葉柄と葉身の汁液の pH, EC, カオチン (Ca^<2+>, Mg^<2+>, K^+)とアニオン (NO_3^-, H_2PO_4^-, SO_4^<2->, Cl^-) の濃度の変化を分析した.pH は,導管液でやや低下したが,葉柄と葉身汁液では培地とほぼ同じ (コマツナ) か,やや上昇 (キュウリ) した.EC は導管液,葉身汁液,葉柄汁液と上昇した.培地の Ca 濃度が 2 mM から 7 mM になると,両作物で生体液の Ca 濃度が上昇, Mg 濃度が低下したが,キュウリはさらに K 濃度が低下した.コマツナ葉身では全 Ca の 60〜88%, 全 Mg の76〜103% が汁液に分布していたが,キュウリ葉身では全 Ca の 5〜11%, 全 Mg の 15〜34% が汁液に分布していた.K は葉柄と葉身の汁液で 100〜150 mM と変わらず葉身 K の約 60〜80% が汁液に分布していた.キュウリの葉身汁液の NO_3^- の濃度はコマツナより低く,またコマツナ葉身では全 N の 11〜25%, キュウリでは 2〜10% が NO_3-N であり,キュウリの活発な NO_3^- 還元能が示唆された.H_2PO_4^- は,導管液で 2〜4 mM, 葉柄汁液で 4〜9 mM, 葉身汁液で 10〜15 mM となり,培地 Ca 濃度の上昇はキュウリの葉柄や葉身の汁液の H_2PO_4^- 濃度を低下させたが,導管液や葉身の全 P への影響はなかった.全アニオン/全カチオンの当量比は,両作物の導管液でほぼ1, コマツナの葉柄汁液でもほぼ1であった.しかし,キュウリの葉柄汁液および両作物の葉身汁液で 0.2〜0.8 となり,他のアニオン (CO_3^<2-> やリンゴ酸) の存在が示唆された.キュウリの台木がクロダネとスーパー雲竜では,養分の吸収,移動,代謝には差がほとんどないので,ハウスで認められたスーパー雲竜台木キュウリ葉の黄白化症は台木根の生理的特性ではなく,養分が富化した上位土層に根が分布したためと考えられた.

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© 1994 一般社団法人日本土壌肥料学会
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