日本土壌肥料学雑誌
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灌水施肥(養液土耕)栽培の肥効は高いのか : 施肥量を段階的に変えた場合のトマトの施肥窒素利用率
林 康人新妻 成一久保 省三
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2003 年 74 巻 2 号 p. 175-182

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抄録

最近注目されている灌水施肥(養液土耕)栽培について,慣行施肥栽培との比較試験を行った。トマトを隔離床で施肥窒素量を変えて栽培し,灌水施肥栽培によって施肥窒素利用率が高まるか検証した。トマトの生育は施肥窒素量に大きく依存した。標準的な施肥窒素レベルである株あたり5gNの施肥では,施肥窒素利用率は灌水施肥栽培で62%,慣行施肥栽培で44%と灌水施肥栽培のほうが18%高かった。また,株あたり2.5gNと5gNの施肥区において,慣行施肥栽培では施肥窒素利用率は70%から44%へ低下したのに対し,灌水施肥栽培ではそれぞれ64%,62%とほとんど変わらなかった。このことは,灌水施肥栽培では株元に少量ずつ施肥を行うために,根域の狭い野菜においても,肥料が効率的に吸収利用されることを示していると考えられた。その結果,同じ施肥量では,慣行施肥栽培よりも灌水施肥栽培のほうが葉柄汁液および溢泌液の硝酸態窒素濃度は有意に高かった。養液中の各成分の供給量を段階的に変化させた結果,葉柄汁液の硝酸態窒素濃度はよく反応し,その他の陰イオンについては,施肥量が多いほど濃度が低下した。

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© 2003 一般社団法人日本土壌肥料学会
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