抄録
絶対寄生菌であるハクサイ根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae Woronin)のレース判定のために,この菌のrRNA遺伝子の18S及びITS領域の塩基配列を利用できるかどうか検討した.すなわち長野県産の7菌株においてウィリアムス法によるレース判定を行うとともに,5菌株の18S rDNAの一部分と7菌株のITS領域の大部分の塩基配列を決定した.18S rDNAで835塩基を連続して決定した前半部において,5菌株間の相互の相同率はいずれも98%以上であった.しかし,長野県の5菌株には米国の株で見いだされたイントロンが欠落していた.ITS領域の塩基配列も7菌株の間で相同率が99%以上とほとんど違わず,またオーストラリア,イギリス,韓国での報告ともきわめて相同性が高かった.rRNA遺伝子の塩基配列の違いとレース判別との明確な対応は見いだせなかったが,一部のレースについて,特定の塩基をマーカーとして利用できる可能性も示唆された.