根室地域の酪農場で生産された性状の異なるスラリーを供試し,窒素(N)を中心とした化学成分の変動がチモシー草地への施用効果に及ぼす影響を調査し,より正確にN肥効を評価する方法について検討した。得られた結果は以下のとおりである。1)施用当年におけるスラリー施用区の乾物収量は無施用区より明らかに増収し,年間合計収量とスラリーのT-N含有率との間には1%水準で有意な正の相関関係が認められた。しかし,施用翌年における増収効果は著しく低下した。2)牧草によるN吸収量と関連するNの形態は番草によって異なり,スラリー施用当年の1番草に対してはNH_4-N,2番草では有機態Nによる影響が大きかった。3)スラリー由来Nの牧草による利用率には,大きな幅が認められ,単位N量当たりで評価した場合,スラリー由来Nの肥効が性状の違いによって変動することが示唆された。4)スラリーの乾物率に対するNH_4-N含有率の比(NH_4-N/DM)により,性状の違いに起因するN肥効の変動を評価することができた。以上のことから,チモシー単播草地に施用したスラリーのN肥効は,スラリーのT-N含有率をNH_4-N/DM比で補正することにより評価できると考えた。