日本土壌肥料学雑誌
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乳牛ふん尿スラリーの施用が土壌団粒形成および理化学性に及ぼす影響
保井 聖一筒木 潔明石 憲宗木村 義彰
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2005 年 76 巻 3 号 p. 269-276

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抄録

乳牛ふん尿スラリーの施用が土壌団粒形成および理化学性に及ぼす影響を明らかにするため,化学的特徴の異なるスラリーをポット土壌に施用した。用いたスラリーは未処理液,曝気処理液および消化液であり,対照として堆肥区および化学肥料区も設置した。全炭素に占める腐植物質の割合は,消化液>曝気処理液>未処理液≫堆肥の順に高かった。これらの資材を炭素の施用量が同一となるようにポット土壌の表層に全層施用し,コマツナを3連作した。その結果,スラリーの施用は堆肥の場合と同様に土壌中の有機物含量を高め,CECを向上させた。同様に糸状菌数および作物根も増加させた。スラリーの施用により,>250μmのマクロ団粒が著しく増加し,その量は消化液区>曝気処理液区>未処理液>堆肥区の順に多かった。マクロ団粒をさらに粒径分画したところ,スラリー施用区では粗粒有機物画分(>53μm)および有機・無機複合体画分(<53μm)の割合がいずれも増加していたが,特に有機・無機複合体の集積が著しかった。サイズ別団粒の炭素の分布を調べたところ,スラリー施用区では主にマクロ団粒を構成する有機・無機複合体に炭素が多く集積しており,スラリー由来の微細な腐植物質の寄与が推定された。一方,堆肥区ではマクロ団粒中の粗粒有機物でのみ重量および炭素量の増加がみられたが,マクロ団粒の形成は明瞭ではなかった。根重量,糸状菌数はいずれもマクロ団粒量と正の相関関係にあった。スラリーの施用により,容積重の低下,重力水孔隙率および飽和透水係数の増加が認められた。以上のようにスラリーの施用により土壌の理化学性が改善されたが,その要因はスラリー由来の腐植物質による有機・無機複合体の集積,ならびに糸状菌数および作物根の増加によるマクロ団粒の形成であると推定され,堆肥の場合と異なることが示された。

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© 2005 一般社団法人日本土壌肥料学会
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