日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
無代かき及び有機質資材の施用が水田からの水質汚濁負荷に及ぼす影響
原田 久富美進藤 勇人伊藤 千春小林 ひとみ渋谷 岳
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2011 年 82 巻 2 号 p. 97-104

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抄録

環境保全的な農法の導入による水田からの水質汚濁負荷に及ぼす影響を明らかにするため,八郎潟干拓地のグライ低地土水田において,2004〜2006年の3年間にわたり,代かきと有機質資材の施用の有無を組み合わせて水質汚濁物質の排出負荷量を調べた.化学肥料による施肥は,いずれの試験区も窒素成分のみ育苗箱施肥とした.無代かき区では,代かき区で認められた代かきから移植前の田面水の濁りがなく,5月における水田からの懸濁物質,有機炭素,全窒素,全リンの正味の排出負荷を抑制した.栽培期間を通じた正味の排出負荷量を代かき区と無代かき区で比較すると,懸濁物質では340kg ha^<-1>,全窒素では1.4kg ha^<-1>無代かき区で低くなっており,無代かき栽培の導入は水田からの水質汚濁負荷の抑制に有効であると考えられる.ただし,同一施肥条件における無代かき栽培の導入による窒素やリンの排出負荷の抑制効果は,代かき栽培を慣行施肥,無代かき栽培を育苗箱施肥として比較した既報の値よりも小さかった.分解されやすい有機質資材を0.67Mg ha^<-1>上乗せ施用すると,栽培期間を通じた正味のリン排出負荷量の増加と5月の全窒素,全リン排出量の増加が認められ,化学肥料の場合と同様に肥料的に利用される有機質資材の施用によっても水質汚濁負荷が生じる可能性が示された.ただし,炭素,窒素,リンの排出量の増加は投入量の4%未満であり,この程度の投入量であれば有機質資材の施用による水質への影響は限定的と考えられる.

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© 2011 一般社団法人日本土壌肥料学会
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