霞ヶ浦周辺の 9河川流域は,前報(板橋ら,2013)のGISモデルにより土壌面に負荷された窒素の河川水質への影響(脆弱性)の違いに基づいて,二つの地域に区分された.このことにより,以下のことが明らかになった.
1)対象とした 9河川流域における脆弱性の高い地域
(MVZ)の流域面積に占める割合(MVZ面積率)は,6.8~52.4%と流域によって異なった.
2)脆弱性の低い地域(LVZ)と MVZにおける面積当たり窒素負荷と,それぞれの地域から河川に流出する水の平均的な窒素濃度の間には直線で近似できる関係が成立した.この時, MVZの直線の傾きは LVZの直線の傾きの約 6.5倍であった.
3)この傾きの比は,流域の MVZ面積率との比較により河川水窒素濃度を低下させるために優先的に窒素負荷削減を進める地域を判断することに利用できた.
4)MVZ面積率の増加は,河川水窒素濃度を MVZからの流出水窒素濃度に近づける効果を持つ.そのため,これを規定する水辺域とそこに流入する地下水流路を保全することは,現状の河川水窒素濃度を維持するために重要である.