日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
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酸性デタージェント可溶有機態窒素含量を導入した有機質資材窒素無機化予測モデルの構築
古賀 伸久 仁科 一哉望月 賢太小林 創平新美 洋井原 啓貴山口 典子山根 剛草場 敬
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2023 年 94 巻 2 号 p. 106-114

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抄録

土壌中における有機質資材の分解によって生成する無機態窒素量を推定するため,統計(階層ベイズ)モデルを構築した.統計モデルは,土壌温度,土壌水分,培養期間,有機質資材の分解特性値としてADSON(酸性デタージェント可溶有機態窒素)含量を入力変数とした.分解速度定数( kij)などのパラメータは,土壌温度,土壌水分,培養期間を変え,ADSON含量の異なる32点の有機質資材を培養し,4種類の土壌を用いた静置土壌培養実験の観測データを当てはめて推定した.統計モデルを構築することにより,ADSON含量が大きいほど,無機態窒素生成量は大きく,ADSON含量が30 mg N g−1乾物以上の資材では温度反応が確認できた.無機態窒素生成の速さを表す kijは,植物油かす,作物残さ,緑肥で大きく,牛ふん堆肥,米ぬか,生ごみ堆肥で小さかった.土壌環境因子に対する応答は,土壌水分よりも土壌温度に対して大きく,30°Cの窒素無機化速度に対する10°Cのそれは46%であった.有機質資材のADSON含量の増加とともに,最大窒素無機化率が増加し,ADSON含量が有機質資材窒素無機化の大小を決める有力な入力変数となることが示された.

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© 2023 一般社団法人日本土壌肥料学会
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