2024 年 95 巻 1 号 p. 1-10
小学校学習指導要領の解説家庭編には「米は,我が国の主要な農産物であり,主食として日本人の食生活から切り離すことができない食品である」,同解説社会編には「国民の主食を確保する上で重要な役割を果たしている稲作については必ず取り上げる」と記されている.しかし,稲作に水田や水田土壌の保水機能が必要である点や,稲作に必要な水の供給には,森林および森林土壌の水源涵養機能が必要である点に関する記述はない.稲作と森とのつながりに気づくには,土壌機能を取り上げる必要がある.そこで,森・土・水・田・イネ・コメの一連のつながりを可視化するために,①施肥法の異なる水稲栽培圃場において作物・土壌学的調査を行い,②野外フィールドでの土壌教育プログラムを発展させ,給食の人気メニューであるカレーライス1杯(米飯150 g)に必要な白米粒数,イネの株数,およびその生産に必要な表土の面積,質量および水分量を定量的に示すことを目的とした.その結果,カレーライス1杯分の白米粒数を3,571粒とした場合,堆肥区,化肥区,無肥区に必要なイネはそれぞれ2.25株,2.22株,3.85株,必要な湿潤土は30.6 kg, 30.6 kg, 50.8 kg(内,含水量は16.5 kg, 15.9 kg, 26.3 kg)となり,無肥区は堆肥区・化肥区よりもイネの株数と水を多く必要とすることが示された.このように,森・土・水・田・イネ・コメのつながりを実感できる土壌教育プログラムを提案する.