抄録
本研究では、骨格型非対称の形態学的特徴を明らかにすることを目的とし、骨格型下顎前突症の中から非対称を有する症例について正面頭部X線規格写真を用いて、脳頭蓋を基準とした骨格系および歯系の構成要素に対する垂直的評価を行い、以下の結果を得た。1.骨格型非対称の骨格系の特徴は、偏位側での小さい下顎枝長、上顎臼歯歯槽部および下顎顎角部の偏位側上がりの傾斜が認められた。2.歯系の特徴では、非偏位側の上顎臼歯の挺出による上顎咬合平面の偏位側上がりの傾斜、下顎切歯の非偏位側への傾斜がみられたが、下顎臼歯の挺出は認められなかった。3.オトガイ部の偏位に伴い上顎咬合平面および下顎顎角部の傾斜は、偏位側上がりの傾向を示した。しかし、症例によっては上顎咬合平面の偏位側下がりの傾斜を示すものも認められ、それらでは上下顎骨・骨体部の水平的非対称の程度が顕著であった。これらの結果から、骨格型下顎前突症における非対称の特徴は、上顎臼歯歯槽基底部、上顎臼歯、および下顎顎角部の垂直的不調和による上顎咬合平面の傾斜が非対称性に大きく関わっていること、しかしながら非対称を伴う症例の中には上顎咬合平面の傾斜を示さないタイプも存在することが明らかとなった。
