抄録
2009 年にホスホリパーゼA2 受容体(PLA2R)が特発性膜性腎症(IMN)の原因抗原の一つとして同定された。今回我々は,補体の沈着を認めないPLA2R 陽性IMN の1例を経験したので報告する。症例は9 歳男児。学校検尿で初めて尿蛋白・尿潜血を指摘された。光顕所見に異常はなく,蛍光抗体法でIgG が糸球体係蹄壁に顆粒状に沈着し,C3,membrane attack complex(MAC)は陰性であった。IgG のサブクラスは補体経路活性化能の弱いIgG4が優位であった。電顕検索で糸球体上皮下への高密度電子沈着物と基底膜病変を確認した。PLA2R の係蹄壁に沿った強い発現を認めた。小児のPLA2R 陽性IMN の報告は極めて稀である。また,MN の糸球体障害は補体依存性とされているが,自験例では,補体経路の活性化とは異なる障害機序が関与している可能性が示唆された。