竹中大工道具館研究紀要
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墨縄と墨壷
沖本 弘
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2002 年 14 巻 p. 59-77

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抄録
線引き道具として使われる墨壺は、線引きための糸を巻取る部分と糸にインクを付着させる壺の部分を一体化した道具である。現代でも中国、朝鮮半島、日本など東アジアに特徴的にみられる道具である。主として中国、日本の墨壺について歴史的な資料として文字、絵画を調べ、近現代の実物の形をもとに比較考察を行った。 中国では、文字資料から線引き道具の出現は紀元前5~3世紀である。この文字から墨壺の形をしていたか明らかでない。墨壺の文字があらわれるのは唐代に入ってからである。日本でもロープだけと推定される墨縄という文字が最初に出現し平安時代に墨壺の文字が出現する。 日本では8世紀のものとされる墨壺が出土している。形はでここに糸車を保持するようになっている。「尻割れ形」は江戸時代中頃まで踏襲されたようである。江戸中期以降には形が多様化している。中国では元代以前の墨壺は発見されてないが、明、清代には形は多様化していたようである。尻割れ形は中国の内陸部大理で使われていた。
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