竹中大工道具館研究紀要
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わが国近世以前における伐木・製材用道具について— 木の建築をつくる技術と道具の歴史に関する調査報告その4 —
渡邉 晶
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2002 年 14 巻 p. 1-58

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抄録
伐木・製材の技術と道具に関して、近世以前の諸資料を調査した結果、次のように要約できる。 (1) 伐木用の主たる道具は、約2000年前より以前が石斧、それ以後が鉄斧(ヨキ)であったが、16世紀後半頃から鋸も併用されるようになったと考えられる。 (2) 原木を大はつりして荒角材をつくる道具は、近世にいたるまで、刃幅の広い縦斧(タツキ)が使われ続けたと推定される。 (3) 大木を製材する道具は、14世紀頃まで斧とクサビ(打割製材)であったが、15世紀頃から二人使いの製材鋸(オガ)が普及し、16世紀後半頃から一人使いの製材鋸(マエヒキ)が使われはじめたと考えられる。 (4) 小木を製材する道具は、14世紀頃まで鑿とクサビ(打割製材)であったが、15世紀頃から一人使いの製材鋸(カガリ)が使われるようになったと推定される。 (5) 伐木・製材の専門工人は、5世紀頃にコタクミからソマヒトが分化し、15世紀頃にソマヒトからオガヒキが、コタクミからコヒキ(カガリ使用)が、それぞれ分化し、16世紀後半頃にオガヒキからコヒキ(マエヒキ使用)が分化したと考えられる。
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