2023 年 34 巻 p. 3-44
本稿は伊勢原市指定文化財の手中明王太郎関係資料のうち、手中家旧蔵大工道具について調査した結果を報告する続編である。 1. 砥石59点、研磨関連の道具類27点、昭和時代前期まで用いられた儀式用具14点を調査し、その所見を記した。 2. 砥石については、社寺彫刻、神輿製作などの湾曲部を加工する彫刻鑿、彫刻刀用のものが多く残されていた。一方で建築用途で多用される平面加工用の砥石が少なく、多くは廃業を期に何らかの事情で失われたものと考えられる。 3. 儀式用具は道具類と衣装・装身具からなる。主要道具は華麗な装飾がなされており棟梁家としての格式をうかがわせる。道具類は江戸中期または明治に、衣装は明治から大正にかけての時期に製作されたと考えられる。