1995 年 7 巻 p. 1-54
1943年に労働科学研究所の行った調査によれば,一人前の大工が本格的な仕事で使う道具は179点、そのうち鋸は10種類12点であった。これが、近・現代における建築用の鋸の標準編成である。 では、近世の建築用の鋸には、どういう種類があったのだろうか。近世の諸資料を調査した結果、次のように要約することができる。 (1) 近世の建築用の鋸は、造材用、構造材加工用、造作材加工用に分類でき、少なくとも7種類10点のものが使われていた。 (2) 鋸は、「大小」や「歯の相違」によって呼称されていた。 (3) 18世紀後半、鋸形状の変化があったと推定した。 (4) 鋸の基本構造は、茎式であった。 (5) 18世紀後半、作業姿勢の変化があったと推定した。