2016 年 334 巻 p. 17-
モンゴルでは2014年より教科外活動「公民教育」の一環として、『道徳』読み物教材に基づく道徳の授業が特設された。それ以降、公民教育は道徳教育としての色彩が強くなり、公民教育と道徳教育は同義語的に使用されるようになった。本稿では、新・旧学習指導要領における「公民教育」の特徴を明らかにし、さらに道徳教育の課題について考える。両学習指導要領を比較してみると、新学習指導要領では、「道徳的な要素」の捉え方がはじめて示され、道徳教育の地位が強化された。このことにより、道徳教育の焦点が、旧来の「公民と国家の関係」、「公民としての義務」などから、「道徳的価値」へと移りつつある。その一方で、能力を軸として編成されている新学習指導要領において、知識や能力に加えて、道徳の内容項目(価値項目)の解説の検討、学校全体としての体制づくりの強化、多様な読み物教材の在り方、グローバル市民の育成など、今後取り組むべき課題も多々ある。