道徳と教育
Online ISSN : 2435-1199
Print ISSN : 0288-7797
334 巻
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 川上 若奈
    2016 年 334 巻 p. 3-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/09/02
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    本研究の目的は、フランスにおいて1833年から1900年にかけて出版された子ども向け雑誌『家庭博物館』誌(“Musée des familles”)に見られるテオフィル・ゴーチエ(Théophile Gautier, 1811-1872)の道徳教育観の特質を明らかにするとともに、文学作品を用いた道徳教育の意義を簡単に指摘することである。そのために、『家庭博物館』誌が、どのような目的を持って、誰を対象として創刊されたのかなどについてまず確認した上で、ゴーチエによって寄稿された二編の文学作品が、『家庭博物館』誌の出版方針に沿うものであったことを論証する。その結果、『家庭博物館』誌の出版方針は、読者の想像力に訴えかけることによって民衆の教化を目指すことにあり、ゴーチエの二つの作品も、その出版方針に沿うものであったことが明らかになった。そして、情景描写を読むことによって想像力を養うということが、文学作品を用いた道徳教育の一つの有効な方法として提示され得るという結論に至った。

  • バヤスガラン オユンツェツェグ
    2016 年 334 巻 p. 17-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/09/02
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    モンゴルでは2014年より教科外活動「公民教育」の一環として、『道徳』読み物教材に基づく道徳の授業が特設された。それ以降、公民教育は道徳教育としての色彩が強くなり、公民教育と道徳教育は同義語的に使用されるようになった。本稿では、新・旧学習指導要領における「公民教育」の特徴を明らかにし、さらに道徳教育の課題について考える。両学習指導要領を比較してみると、新学習指導要領では、「道徳的な要素」の捉え方がはじめて示され、道徳教育の地位が強化された。このことにより、道徳教育の焦点が、旧来の「公民と国家の関係」、「公民としての義務」などから、「道徳的価値」へと移りつつある。その一方で、能力を軸として編成されている新学習指導要領において、知識や能力に加えて、道徳の内容項目(価値項目)の解説の検討、学校全体としての体制づくりの強化、多様な読み物教材の在り方、グローバル市民の育成など、今後取り組むべき課題も多々ある。

  • 宮下 聡子
    2016 年 334 巻 p. 29-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/09/02
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    宗教教育は従来、宗派教育、宗教知識教育、宗教的情操教育に分けられてきた。国公立学校での宗派教育は法で禁じられており、宗教知識教育は国公私立を問わずすべての学校で現になされている。宗教的情操教育は、宗教的情操が人間のありようを大きく左右するとの理解のもと、道徳の学習指導要領にも盛り込まれ、道徳教育の一環として位置づけられているが、国公立の学校現場ではおしなべて実施されていない。本稿では、宗教的情操教育がすべての学校で適切に実施されることが法に十全に適っているとの考えに立って、国公立学校でも可能な、特定の宗教、宗派によらない宗教的情操教育の道徳教育への貢献可能性について、精神科医を本業とし、宗教や倫理にも関心と造詣の深い二人の思想家の宗教的倫理を手がかりに、思想的、理論的レベルで考察する。二人の思想家とは、人間の悪の問題を考え抜いたユング、人間の生の意味について追究したフランクルである。

  • 森川 敦子, 鈴木 由美子, 髙橋 均
    2016 年 334 巻 p. 41-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/09/02
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    本研究の目的は、向社会性と規範意識の育成によって対人的適応感を向上させる2つのタイプの道徳教育プログラムの効果検証を通して、中1ギャップを解消する道徳教育プログラム開発のための示唆を得ることである。そのために、ソーシャルスキルトレーニング(Social Skills Training;以下SSTと記述)と規範意識や思いやりを育成する道徳授業とを組み合わせた道徳教育プログラムを開発し、その効果を比較検討した。本研究の結果、次の点が示唆された。①生徒の対人的適応感の向上には、まずSSTや向社会性を育成する道徳授業によって学級に温かい道徳的雰囲気を醸成し、その後で、規範意識を育成する道徳教育プログラムが効果的である。②生徒の規範遵守意識を向上させるためには、温かい道徳的雰囲気の中で、他者への思いやりや共感をしっかりと育成する取組が効果的である。③道徳教育プログラムを開発する際には、道徳教育プログラムの要素だけでなく組み合わせ方にも配慮する必要がある。

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