抄録
飲用海洋深層水(以後,DSW water)を用いて昆布とかつお削り節から調製しただしの特徴を水道水(以後,Tap water)および市販のナチュラルミネラルウォーター(以後,NM water)で調製しただしと比較した.その結果,pH値,濁度にはほとんど違いはなかったが,それら3種の供試水で調製されただしの味には,顕著な差異が見られた.本研究において,DSW waterを用いて調製しただしの味が最も高く評価されたのは,だし中に含まれるナトリウム(以後,Na)およびカリウム(以後,K)の含有量の違いに起因すると推察された.また,DSW waterで調製しただしをCaco-2細胞による腸管上皮モデルに添加したところ,タイトジャンクション(以後,TJ)関連タンパク質であるオクルディン(以後,OCLN)の発現が明らかに亢進した. しかし,Tap waterを用いただしによるOCLN発現亢進はそれに比べて弱かった.ところがDSW waterを用いてかつお削り節のみから調製しただしの添加は,顕著にOCLNの発現を亢進させたので,DSW waterを用いて昆布とかつお削り節から調製しただしのOCLN発現促進効果は,DSW waterを用いてかつお削り節から調製しただし中に含まれる成分に起因することが示唆された.これらの結果から, DSW waterを用いて昆布とかつお削り節から調製しただしは,うま味が強い上に腸管上皮のTJ関連タンパク質の発現を亢進する作用を有していることが示唆された.