海洋深層水研究
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21 巻, 2 号
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  • 山田 勝久, 山本 樹, 柴田 雄次, 野村 道康, 今田 千秋
    2020 年 21 巻 2 号 p. 21-30
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    飲用海洋深層水(以後,DSW water)を用いて昆布とかつお削り節から調製しただしの特徴を水道水(以後,Tap water)および市販のナチュラルミネラルウォーター(以後,NM water)で調製しただしと比較した.その結果,pH値,濁度にはほとんど違いはなかったが,それら3種の供試水で調製されただしの味には,顕著な差異が見られた.本研究において,DSW waterを用いて調製しただしの味が最も高く評価されたのは,だし中に含まれるナトリウム(以後,Na)およびカリウム(以後,K)の含有量の違いに起因すると推察された.また,DSW waterで調製しただしをCaco-2細胞による腸管上皮モデルに添加したところ,タイトジャンクション(以後,TJ)関連タンパク質であるオクルディン(以後,OCLN)の発現が明らかに亢進した. しかし,Tap waterを用いただしによるOCLN発現亢進はそれに比べて弱かった.ところがDSW waterを用いてかつお削り節のみから調製しただしの添加は,顕著にOCLNの発現を亢進させたので,DSW waterを用いて昆布とかつお削り節から調製しただしのOCLN発現促進効果は,DSW waterを用いてかつお削り節から調製しただし中に含まれる成分に起因することが示唆された.これらの結果から, DSW waterを用いて昆布とかつお削り節から調製しただしは,うま味が強い上に腸管上皮のTJ関連タンパク質の発現を亢進する作用を有していることが示唆された.
  • 石井 晴人, 白石 准, 中井 咲恵, 渡部 真理絵, 山田 勝久, 野村 道康
    2020 年 21 巻 2 号 p. 31-38
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    刺胞動物門に属するタコクラゲは,体内に褐虫藻を共生させており,その褐虫藻の行う光合成によって有機物を得ていることが知られている.そこで本研究では,栄養塩の豊富な海洋深層水を使用してタコクラゲを飼育し,海洋深層水がタコクラゲの成長にどのような影響を与えるのかを飼育実験を通して明らかにし,海洋深層水の有効性について検証した.海洋深層水との比較のために,静岡県伊東市赤沢港の表層水,また海洋深層水と表層水を混合させた海水も飼育海水として用いた.タコクラゲの生残率は,どのような海水を用いても全実験期間を通じて100%であった.タコクラゲの比成長速度は,海洋深層水の方が表層水と比較して有意に高く,海洋深層水の有効性が明らかとなった.これは,海洋深層水に含まれる高濃度の栄養塩類が,タコクラゲ体内に共生している褐虫藻による有機物固定に有効に働いたためであると考えられる.一方,タコクラゲに共生している褐虫藻の密度は,海水のタイプによる有意な差は認められなかった.以上のことから,共生褐虫藻を体内に保有するクラゲ類(例えば,サカサクラゲ)を効率的に飼育する場合には,海洋深層水を用いることが推奨される.
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