海洋深層水研究
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タコクラゲの成長に海洋深層水が与える影響
石井 晴人白石 准中井 咲恵渡部 真理絵山田 勝久野村 道康
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2020 年 21 巻 2 号 p. 31-38

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抄録
刺胞動物門に属するタコクラゲは,体内に褐虫藻を共生させており,その褐虫藻の行う光合成によって有機物を得ていることが知られている.そこで本研究では,栄養塩の豊富な海洋深層水を使用してタコクラゲを飼育し,海洋深層水がタコクラゲの成長にどのような影響を与えるのかを飼育実験を通して明らかにし,海洋深層水の有効性について検証した.海洋深層水との比較のために,静岡県伊東市赤沢港の表層水,また海洋深層水と表層水を混合させた海水も飼育海水として用いた.タコクラゲの生残率は,どのような海水を用いても全実験期間を通じて100%であった.タコクラゲの比成長速度は,海洋深層水の方が表層水と比較して有意に高く,海洋深層水の有効性が明らかとなった.これは,海洋深層水に含まれる高濃度の栄養塩類が,タコクラゲ体内に共生している褐虫藻による有機物固定に有効に働いたためであると考えられる.一方,タコクラゲに共生している褐虫藻の密度は,海水のタイプによる有意な差は認められなかった.以上のことから,共生褐虫藻を体内に保有するクラゲ類(例えば,サカサクラゲ)を効率的に飼育する場合には,海洋深層水を用いることが推奨される.
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© 2020 海洋深層水利用学会
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