2021 年 22 巻 2 号 p. 49-57
放線菌からは様々な医薬品のリード化合物が発見されてきたが,近年では新規化合物を得ることが困難となっている.本研究では,異なる二次代謝能力を有する放線菌群の発見を目的として,海洋深層水中から放線菌を分離し,生産物を網羅的に解析することで,医薬品探索源としての有用性を評価した.富山県入善沖の海洋深層水から分離された110株の放線菌を属レベルで同定したところ,Streptomyces属88株,Micromonospora属19株,Actinomadura属2株,Nocardiopsis属1株であった.これらの生産物をHPLC-UVスペクトルデータベースを用いて解析した結果,41%がデータベースに一致しない未知化合物を生産していた.このうち5株を選定して主要な生産物の構造解析を行った結果, 5つの新規化合物が確認された.以上の結果から,海洋深層水中には陸上とは異なる二次代謝能力を有する放線菌群が存在しており,医薬品の探索源として有望であると考えられる.