海洋深層水研究
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22 巻, 2 号
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  • 山田 勝久, 柴田 雄次, 山本 樹, 野村 道康
    2021 年 22 巻 2 号 p. 29-37
    発行日: 2021/12/27
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    海洋深層水(DSW)は,UVA照射により生じる正常ヒト皮膚由来線維芽細胞(NHDF)の石灰化を抑制する.以前著者らはUVA照射により生じるNHDFの石灰化において,アルカリフォスファターゼ(ALP)活性の亢進が誘導されることおよびDSWがALP活性の亢進を制御することを報告した.本研究の目的は,DSWおよび2種の周知のALP活性阻害剤を用いて,UVA照射により生じるNHDFの石灰化とALP活性の関係を検討することである.本研究にあたり,ウサギの角膜由来細胞(SIRC)を用いた刺激性試験において,電気透析された海洋深層水(EDW)の評価がDSWより良好であったので,EDWを本研究の対象とした.初めに,UVA照射により生じる石灰化に対する影響を検討し,次にALPの活性に対する影響を検討した.別に,ALP活性阻害剤であるSodium etidronate(ETA)およびHomo arginine(HA)のUVA照射により生じる石灰化に対する影響を検討した.その結果,EDWを含むALP活性阻害成分によるUVA照射で生じるNHDFの石灰化抑制効果は,単独では限定的なものであった.そこで最後に,EDWとALP活性抑制剤との同時使用によるUVA照射により生じるNHDFの石灰化に対する作用について検討した.その結果,それらの同時使用はUVA照射により生じるNHDFの石灰化を顕著に抑制した.この結果は,EDWおよびALP活性阻害剤のALP活性阻害効果の和だけでは説明できないことから,これらの同時使用はUVA照射により生じるNHDFの石灰化に対して相乗的な作用を有することが示唆された.
  • 浦田 和也, 安永 健, 池上 康之, 小見 聡史, 冨賀見 清彦, 田中 辰彦, 鎌野 忠, 石田 雅照, 大原 順一, 西田 哲也, 中 ...
    2021 年 22 巻 2 号 p. 39-47
    発行日: 2021/12/27
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    沖縄県海洋深層水研究所では2013年から,実海水を用いた海洋温度差発電(OTEC)の実証研究が開始され,6年間の連続運転が行われた.久米島では,エビや海ぶどうの養殖などの水産業,農業,浴用,飲料水や化粧品の製造などに海洋深層水が利用され,島内の大きな産業へとつながっている.今後,海洋深層水の取水量増加による関連産業の拡大やOTECの導入が検討されている.一般的に,海洋深層水は,低温安定性,清浄性,富栄養性などの特性が知られているが,久米島東側海域における海洋の栄養塩や主要元素などの鉛直分布の基礎データは殆どない.そのため,本稿では,久米島東側においてCTD観測を実施し,水温,塩分,溶存酸素量の鉛直分布を計測した.それらのデータを整理し,既往のデータとの比較と共に久米島近海におけるOTECのポテンシャル,海洋深層水複合利用に必要となる栄養塩類の基礎データを明らかにした.
  • 春成 円十朗, 荻野 景子, 金木 紗恵, 熊谷 敬之, 五十嵐 康弘
    2021 年 22 巻 2 号 p. 49-57
    発行日: 2021/12/27
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    放線菌からは様々な医薬品のリード化合物が発見されてきたが,近年では新規化合物を得ることが困難となっている.本研究では,異なる二次代謝能力を有する放線菌群の発見を目的として,海洋深層水中から放線菌を分離し,生産物を網羅的に解析することで,医薬品探索源としての有用性を評価した.富山県入善沖の海洋深層水から分離された110株の放線菌を属レベルで同定したところ,Streptomyces属88株,Micromonospora属19株,Actinomadura属2株,Nocardiopsis属1株であった.これらの生産物をHPLC-UVスペクトルデータベースを用いて解析した結果,41%がデータベースに一致しない未知化合物を生産していた.このうち5株を選定して主要な生産物の構造解析を行った結果, 5つの新規化合物が確認された.以上の結果から,海洋深層水中には陸上とは異なる二次代謝能力を有する放線菌群が存在しており,医薬品の探索源として有望であると考えられる.
  • 柴田 雄次, 野村 道康, 山本 樹, 栗原(松井) 紋子, 遠藤 雅人, 山田 勝久
    2021 年 22 巻 2 号 p. 59-63
    発行日: 2021/12/27
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    1946年に国民健康栄養調査が実施されて以来,日本ではヒトの健康に必須の栄養素であるマグネシウム(以下,Mg)の摂取量が減少している.それゆえに,Mgの効率的な摂取方法が期待される.そこで我々は食パンが今日の日本人にとって日常食となりつつあることから,効率的なMg摂取のための食品のひとつとして食パンに注目した.本研究では製パン材料として小麦粉に次いで2番目に多く用いられる水の影響について調査した.すなわち供試水としてMgを多含する海洋深層水(以下,DSW)および比較対照として水道水(以下,TW)を用いて食パンを製造した.なお本研究では家庭用として市販されているベーカリー機で製パンを行った.試験食パン中のMg量とそれに含まれるその他の主要ミネラル(Na, K, Ca)量を測定した.さらに試験食パンの評価として,食感および物性を調査した.その結果,試験食パンのMg含有量は,対照食パンの5.3倍多かった.一方,試験食パンと対照食パンの間には食感および物性にほとんど違いがなかった.さらに試験食パンは対照食パンと比較して水分保持力が高いことがわかった.本研究の結果から,DSWは効率的にMgを摂取するためのパン製造において有望な材料の1つとして期待される.
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