1946年に国民健康栄養調査が実施されて以来,日本ではヒトの健康に必須の栄養素であるマグネシウム(以下,Mg)の摂取量が減少している.それゆえに,Mgの効率的な摂取方法が期待される.そこで我々は食パンが今日の日本人にとって日常食となりつつあることから,効率的なMg摂取のための食品のひとつとして食パンに注目した.本研究では製パン材料として小麦粉に次いで2番目に多く用いられる水の影響について調査した.すなわち供試水としてMgを多含する海洋深層水(以下,DSW)および比較対照として水道水(以下,TW)を用いて食パンを製造した.なお本研究では家庭用として市販されているベーカリー機で製パンを行った.試験食パン中のMg量とそれに含まれるその他の主要ミネラル(Na, K, Ca)量を測定した.さらに試験食パンの評価として,食感および物性を調査した.その結果,試験食パンのMg含有量は,対照食パンの5.3倍多かった.一方,試験食パンと対照食パンの間には食感および物性にほとんど違いがなかった.さらに試験食パンは対照食パンと比較して水分保持力が高いことがわかった.本研究の結果から,DSWは効率的にMgを摂取するためのパン製造において有望な材料の1つとして期待される.
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