北海道南西岸の磯焼け地帯の転石を2基の屋外水槽 (小型巻貝区と対照区) に入れ, 11℃ に加温した富山湾深層水 (取水水深321m) を流して植生変化を調べた. 当初, サンゴモが広く覆い, 小点状のイソイワタケとマクサなどの匍匐体だけが認められた. 小型巻貝区では摂餌により珪藻が除去され, 転石の下面, サンゴモの藻体間や突起間および貝殻から計16種の海藻が生えた. ダルスは全長30cm, ホソメコンブは160cmまで成長, 成熟し, マクサも5cmまで伸びた. イソイワタケがその被覆面積を広げ, 被度約10%に達した石もあった. 一方, 対照区では珪藻が著しく繁茂し, 海藻は殆ど伸びず, サンゴモは半年後も生きていたが, 7ヵ月目に小型巻貝を入れると珪藻が除去され, イソイワタケやマクサが成長を始めた. 本試験と既報の表層海水 (自然水温) を用いた試験により, この磯焼け地帯の海藻植生回復には栄養塩と中程度の撹乱 (小型巻貝の摂餌) が必要と考えられる.