生物環境調節
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低温と高温の組合せ効果に関する白菜花茎伸長の数式モデル
森 啓一郎江口 弘美松井 健
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1980 年 18 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

植物の生育および分化に関与する環境要因の作用を量的に評価するために, 前報において白菜の花茎伸長に作用する低温, 温度降下勾配および日長をパラメータとした数式モデルを報告した.本報においては花茎伸長に対する低温処理後の高温の作用を評価し, その評価パラメータを組み入れた数式モデルに発展させることを試みた.春播白菜「長岡交配耐病六十日」を用い播種15日目に8時間日長 (人工光) 条件で低温 (5℃) 処理を行い, 処理後24時間日長条件で高温 (25, 30, 35℃) 処理を行った.その結果, 高温の作用は花茎の最終値に対してはほとんど認められなかったが, 花茎伸長の立ち上りの遅れに明瞭であった.そこで花茎伸長の立ち上りの遅れを花茎伸長に近似する1次遅れ式の時定数とむだ時間の和として評価した.前報で決定した立ち上りの遅れに対する低温の効果の評価パラメータlog10T1/2td2 (△T=20℃一低温処理温度, tdは低温処理時間) に高温条件をパラメータとして組み入れて, Hを高温処理時間の関数とした場合, log10HT1/2td2が低温の効果と高温の効果を組み合せて立ち上りの遅れを評価しうることがわかった.このモデルから, 白菜の花茎伸長に対する低温の効果は, 低温処理後の温度によっても異なり, 高温評価パラメータ (H) はつねに1.0以下となっていることから, 高温 (25~35℃) は低温の効果を積の形で減少させることが明らかになった.

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