生物環境調節
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植物細胞への二酸化硫黄の影響を解析するためのモデル実験系
I.シダ配偶体における実験諸条件
和田 正三清水 英幸安部 弘門田 明雄近藤 矩朗
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1986 年 24 巻 3-4 号 p. 95-102

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抄録

植物細胞に対する二酸化硫黄の影響を調べるための諸条件, すなわち培地濃度, pH, 亜硫酸濃度などをホウライシダ配偶体をモデル系として検討した.K-リン酸緩衝液 (1mM, pH6.0) 中における亜硫酸濃度は, 二酸化硫黄の溶解や, 溶解してできた亜硫酸の酸化により実験期間中に容易に変動する.二酸化硫黄の液体培地中への溶解量は二酸化硫黄ガスの流速に関係しており, 培地表面の状態が大きく影響すると考えられた.Na2SO3を溶解した場合に得られる亜硫酸は酸化により溶解直後から急速に崩壊するが, 培地1ml当り1mgのシダ胞子を懸濁すると崩壊はおさえられた.試行された諸条件下で, ホウライシダ胞子に0.1ppmの二酸化硫黄を5日間暴露すると, 発芽およびその後の配偶体の発達は極度におさえられることがわかった.これらの事実に基づき, 大気汚染ガスである二酸化硫黄の植物細胞に対する影響を調べる場合, 実験条件を慎重に整える必要があることを論議した.

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© 日本生物環境工学会
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