抄録
Phytochromeの赤色光吸収色素 (PR) と近赤外光吸収色素 (PFR) の消長により日長反応や種々の形態的変化が起こることが最近の多数の研究で明らかとなった.そこで日長習性 (長日性, 短日性または中性) とこのPhytochromeの消長との間に何らかの関係が見出されるか, および組織によりどのような傾向の差があるかを種々の植物種と組織を使って実験を行なった.
短日性植物としてダイズの胚軸, モロコシの鞘葉, オナモミの胚軸, トウモロコシの鞘葉と第1節間を, 長日性植物としてオオムギの鞘葉, インゲンマメの子葉上茎, ダイコンの胚軸を, 中性植物として, 中性インゲンマメの胚軸, エンドウマメの子葉上茎, 中性トウモロコシの鞘葉と第1節間を使用した.26℃全暗黒下で水浸4~7日後に1~3mmの5~10切片を一区として10分間赤色光を照射した.これは80kerg/cm2/secに当たる光源を使用した.その後再び20℃全暗黒下に置き0~6時間目に全Phytochrome量 (以下PT) , 赤色光吸収色素 (PR) , 近赤外光吸収色素 (PFR) ごとに測定した.なお無照射区では期間中PTにほとんど変化はなかった.
鞘葉におけるPTはいずれの材料も同じ傾向で減少しMFRは4~5時間で0となる.PRはわずかではあるが確実に増加する.しかし日長習性との間には何ら関係が見出されない.胚軸と子葉上茎においても大体鞘葉と同じ傾向であるが, 絶対価において差がある.PTとPFRの減少は非常に早く1時間で著しくPFRは4時間後0となる.一方PTは1時間急激に減少するがその後安定する.換言すればPRの増加が1時間内に著しく鞘葉に較べ高い量で安定する.この場合も日長習性との間に何ら明瞭な関係はない.鞘葉と胚軸, 子葉上茎との間の差は次の3点が挙げられる.1) PTの減少は前者で20~30%, 後者で35~50%, 2) PRの増加は前者で5~15%, 後者で20~30%, 3) PFRとPRの量が同じになる時間は前者で2~3時間, 後者で1時間以内.第1節間では1時間以内はPT, PFR, PRともにほとんど変化せず, その後は鞘葉における変化が2~3時間遅れただけの型となるが, 全体に個体間の差が大きい.
いつれの場合もPhytochromeの変化は, PT, PFR, PRのlevelで各組織ごとに上述のようにかなり明確な差を示すが日長習性との間には何ら明瞭な関係は見出されない.Phytochromeの光化学的な面で幾らかの論議が行なわれた.