生物環境調節
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植物体内の水分状態とその制御に関する研究 (4)
―種々の根の通水抵抗について―
長野 敏英石田 朋靖森田 茂紀
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1993 年 31 巻 3 号 p. 147-153

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抄録
根系における通水抵抗について測定を行った.測定方法は圧チェンバー法, サイフォン法を用いた.根系の通水抵抗は (1) 3次根の根の表面から導管までの透過抵抗, (2) 3次根の導管中を水が流れるさいに受ける通導抵抗, (3) 2次根の通導抵抗, と三つの部分に分離して検討を行った.根の全体通水抵抗は流量が増大するにつれて減少し, ある流量以上になると一定値になる.導管中の流れはHagen-Poiseulle則の円管流れに類似しており, 通導抵抗は等価導管径の-4乗に比例する.トウモロコシの通導抵抗はHagen-Poiseulle則を用いて計算した理論値とほぼ等しい.しかしヒマワリ, コムギでは, 既報の大豆の例2) と同じく理論値にくらべて3.5~5倍の値になった.簡単な根系モデルを用いて, 根系各部位の通水抵抗を求めた.根系の全通水抵抗のなかで, 2次根と3次根を合わせた全通導抵抗は, ヒマワリでは19%, トウモロコシでは1%, 根の表面から導管までの全透過抵抗がヒマワリでは81%, トウモロコシでは99%を占めていることがわかった.
圧チェンバー法・サイホン法は根系の通水抵抗の測定方法として非常に有効な手段であることが明らかになった.とくに全体抵抗を測定する場合, 圧チェンバー法ではチェンバー内外すなわち根の表面と根基部との間で1MPa前後の大きな圧力差を与えることができる.したがって, 植物が通常の蒸散活動を行っている根の吸水条件下で実験が可能である.
本研究をすすめるにあたり, 東京大学農学部山崎耕宇教授 (現東京農業大学教授) からは貴重なご助言, 根の導管の同定等に懇切なご指導をいただいた.ここに記して感謝の意を表する.また実験にご協力をいただいた山形大学農学部俵谷圭太郎助手, 若松克子氏 (現: 日本IBM) , 東京農業大学山本寛子氏に厚く謝意を表する.
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© 日本生物環境工学会
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