抄録
べたがけ下作物の生育の特徴を調査する目的で, ポリプロピレン長繊維不織布によるべたがけ栽培と無被覆栽培の春どりホウレンソウについて生長パラメータを算出し, これらを比較した.被覆は3月下旬の作物が2葉期になった時点で行った.べたがけ下では日射が約15%カットされ, 日最高気温と日最低地温の被覆期間平均値がそれぞれ1.7℃と0.6℃上昇した.さらに, 日最低気温が0.6℃降下したが, その他の環境には大きな影響はなかった.
べたがけ下では作物生育が促進された.この原因はべたがけ下で相対生長率が大きくなることと考えられた.べたがけ下では被覆初期には純同化率が無被覆より大きくなる傾向があり, そのため相対生長率も若干大きくなった.作物の生育が進むと, べたがけ下作物の純同化率は無被覆のそれよりも小さくなったが, 葉面積比にべたがけの影響が出始め, べたがけ下の作物では無被覆の株よりも大きな葉面積比が算出された.このためべたがけ下作物の相対生長率は無被覆株以上の値を保持し続けた.葉面積重量比と葉重比に対するべたがけの影響は前者に対してのほうが大きく, べたがけ下で作物の葉面積比が大きくなった主たる原因が葉面積重量比の増大であったことが示された.