生物環境調節
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ニホンナシにおける開花期から幼果期にかけての脂質代謝および耐凍性の変化
廖 汝棠田辺 賢二田村 文男板井 章浩
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1997 年 35 巻 1 号 p. 21-28

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抄録
ニホンナシの花や幼果の耐凍性に対する脂質代謝と温度の影響を検討するために, “二十世紀”における花や幼果の耐凍性の変動ならびに花と幼果の脂質および構成脂肪酸を調べた.気温の上昇に伴って, 発育ステージは進行し, 主要リン脂質であるPC, PEおよび主要糖脂質であるDGDG, MGDGの量は徐々に減少し, 耐凍性も弱くなる傾向を示した.一方, 耐凍性は満開後に急激に弱まるとともに, 総脂質の構成脂肪酸の中で, リノレイン酸の割合は減少し, 逆にリノール酸は著しく増加した.各脂質の構成脂肪酸についてみると, PA, PC, PE, MGDGでは主にリノレイン酸の減少とリノール酸の増加, PI, GDGDについてはリノレイン酸の減少とパルミチン酸の増加がみられた.また, 各脂質の構成脂肪酸の不飽和度は満開後に低くなる傾向があった.以上の結果より, ニホンナシ開花期と幼果期には, 気温増加と開花および幼果の発育によって生体膜における脂肪酸の組成の違いが生じた結果, 膜の安定性, 物質の輸送, 代謝等の生理機能の変化が起こり, 耐凍性の差異が生じるものと考えられた.
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© 日本生物環境工学会
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