抄録
閉鎖生態系生命維持システム (CELSS) における酸素再生システムを, 藻類の光合成を利用して構築するための基礎的研究の一環として, 放射伝播方程式による藻懸濁液中の光強度分布の理論的な解析を行った.藍藻類のSpirulina platensisの懸濁液を対象とし, 吸光係数, 散乱係数を近似測定法で測定し, 散乱の角度分布を表すphase functionに適当な関数形を仮定して, 放射伝播方程式をMonte Carlo法によって数値的に計算した.計算値と実測値を比較した結果, phase functionにいかなる関数形を仮定しても両者が一致する結果は得られなかった.そこで, 吸光係数, 散乱係数も変化させて計算を反復し, 計算値と実測値が一致する値の組み合わせを選抜した.この結果, 計算値と実測値が極めて良く一致する吸光係数, 散乱係数を得ることができた.計算によって得られた吸光係数, 散乱係数は近似測定法で得られた値と大きく異なるものとなった.