抄録
研究の目的は, 冠水と酸素欠乏ストレスがトウモロコシの呼吸代謝に与える影響を明らかにすることにある.そのため本研究では, トウモロコシの2品種 (ジェリーバンタム, ポップコーン) の芽生えに冠水と酸素欠乏ストレスを与え, これらのストレスがアルコール脱水素酵素 (ADH) と乳酸脱水素酵素 (LDH) の活性に与える影響, およびアルコール発酵と乳酸発酵の重要性を調べた.冠水と酸素欠乏ストレスは, 両品種の芽生えのシュートと根においてADH活性を増加させたが, LDH活性は増加させなかった.このADH活性の増加は, いずれのストレスでも, 両品種ともに根でシュートより大きかった.また, 冠水ストレスは, ジェリーバンタムでポップコーンよりADH活性を増加させたが, 酸素欠乏ストレスでは, 両品種間で差がなかった.また, 電気泳動によるADHアイソザイム分析の結果, これらのストレスによって, 対照区で発現しているADHアイソザイム (1種類) のバンドが著しく濃くなり, 新たに2種類のADHアイソザイムバンドが両品種で確認できた.この結果は, これらのストレスはADHタンパク質の合成量を増加させたことを示唆している.以上の結果は, トウモロコシ芽生えにおいて, 冠水と酸素欠乏ストレスは, ADH活性を増加させアルコール発酵を促進させること, LDH活性は増加させず乳酸発酵を促進しないことを示唆している.また, このADH活性の増加は, ADHタンパク質の合成量が増加したためであると考えられる.