生物環境調節
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高圧放電灯が植物の生育におよぼす影響
卜蔵 建治
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1968 年 6 巻 1 号 p. 29-33

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抄録

ニンジンの育種は: オランダではかなり進んでいるが, 一代雑種用による育種に伴って, この作物の種子生産と育種法に関連した花の形態や生理と環境条件の関係を詳細に研究する必要性が生じた.この研究は“Amsterdam Forcing”という品種を用いてニンジンの花茎の生長, 開花習性および花の雌雄花発現におよぼす温度の影響をワーゲニンゲンの園芸植物育種研究所のファイトトロンで行なったものである.
材料は前年の夏に播種し-5℃で春化処理を行なったものをつぎの4区の環境条件に生育させた. (1) 自然光日長8時間26℃, (2) 自然光日長8時間20℃, (3) 自然光日長8時間14℃および (4) 自然日長で自然温度である.
より多くの種子はよりよく栄養生長した植物から得られるが, 栄養生長の速度は26゜>20゜>14℃となったが, 植物体の最終的な大きさは逆に14゜>20゜>26℃という結果を得た.そのため開花は高温ほど早く26゜, 20゜, 14℃の順となり, 低温の14℃では花茎の側枝が部分的に十分生長しない現象がみられた.繖形花序 (umbel) の数は26゜, 20゜, 14℃区で株当り平均69, 59, 44で高温ほど多いが, 低温における花序数の減少は温度の形態形成におよぼす直接の影響ではなく, 低温での生長速度低下による間接的な影響であった.花序当りの小繖形花序 (umbellet) の数およびumbellet当りの花の数は26゜, 20゜, 14℃でそれぞれ1前者で28, 34, 49, 後者は16, 22, 32の値を示し, 14℃での株当りの花の数は26℃での値の2倍以上となった.
ニンジンの種子生産能力は稔性のある両性花の数によって決まるが, 14℃では両性花と雄花の比は高温区に比べて両性花がわずかに多く, 花茎の上部の花序ほど両性花の数は少なくなった.雄花の稔性は高温になるにつれて低下した.また稔性ある両性花の数は14℃が20゜および26℃に比べてずっと高い値を示した.

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© 日本生物環境工学会
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