生物環境調節
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Wisconsin Biotron U.S.A. (II)
宮山 平八郎
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1969 年 6 巻 2 号 p. 123-130

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抄録

ブラシカ類の交雑品種は自家不和合性系統で維持されている.しかし自家不和合性系統を用いる場合, 商業べースで雑種種子を生産するときに多くの困難なことが実際におこる.これは雄性不稔系統を用いることによって解決されるであろう.
コモチカンランの雄性不稔性の発現は, 圃場での観察によると生育条件によって影響を受けることがわかった.そのうちでも温度の影響が大きいのでその調査がおこなわれた.種々の程度の雄性不稔を示すコモチカンランを茎挿によって殖やし, この株をフレーム内で越冬させて, 翌春抽苔後開花の数週間前に, ワーゲニンゲンの園芸植物育種研究所にある10°, 14°, 17℃恒温のファイトトロンの各室に入れた.
株による開花開始の差はわずかであったが, 10℃の株の間では11日の差があった.17℃では雄性不稔系統の雄芯の発達はもとの植物とかわらなかったが, 正常な稔性のある植物は正常な花をつくり, 多くの花粉をつくった.一方, 10℃では完全不稔および部分的不稔性系統の多くの株は, 正常のものと差のない花をつけ多くの花粉がつくられた.しかし, 大部分は正常なものに比しその量は少なかった.14℃区では雄性不稔系統の花の発達は10℃と17℃の中間であった.この結果より, 低温は雄性不稔植物が花粉をつくる原因となることが明らかである.しかし, 2株の植物は全く反対の反応を示し, 10℃よりも17℃でより多くの花粉をつくった.
10℃に育てた雄性不稔植物につくられた花粉の良否を酸性フクシン染色によって調べたところ, 個体内での花の間では花粉稔性にわずかの差しかなかった.これに反して株と株の間には大きな差があった.10℃に育てた稔性ある正常植物では90%以上の稔性を示したが, 完全な雄性不稔植物の花粉稔性は45~58%で正常のものの約1/2であった.また10℃区の植物を用いて受粉をおこなったところ, 稔性ある正常植物では平均1花につき15~17粒の種子を得たが, 雄性不稔植物は8~12粒で明らかに低かった.雄性不稔植物の雌性の稔性は温度による差はなく, また正常のものとかわらなかった.
これらの結果から考えて, キャベツ類の雄性不稔系統は低温または高温下で自家受粉または兄妹交配によって系統維持と増殖をおこなうことができると考えられる.

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© Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
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