抄録
現在の温度調節環境は空気温度の制御によって造成されている.したがって植物反応と温度との関係を解析する場合にも, 空気温度だけが考慮され, 植物体の温度についてはほとんど考慮されていない.このような温度調節環境において, 植物体の温度が各種環境要因にどのように影響されているかを解析することは, 植物反応と温度との関係をより精密に解析する上に著しく重要である.本実験ではカボチャ子葉にmicro-thermisterを挿入してその温度を測定し (風速0.3~0.5m/sec) , 空気温度, 光, 湿度が葉温におよぼす影響を解析した.
暗黒・相対湿度70%においては, 空気温度10℃のとき葉温10℃であり, 葉気温差は認められなかった.空気温度20℃のとき葉温は19℃で空気温度より1.0℃低く, 空気温度30℃のとき葉温は28.5℃で1.5℃低かった.空気温度を30分間に30℃から40℃に変化させた場合, 葉温は一時38.5℃となったが, 10分後には36.5℃に下り, さらに, また38℃に上った.この現象はactiveな生葉において観察され, 黄化した子葉では認められなかった.したがって葉温のこの特異的な変動は, 気孔の開閉など植物特有の機作によるものと考えられる.タングステンランプで子葉に, 22mW/cm2の光を照射した場合, 空気温度が10℃のとき, 葉温は急速に15℃まで上昇した.さらに空気温度20℃で, 葉温は24.5℃となり, 空気温度30℃で, 34℃となった.空気温度を40℃に上昇させた場合, 葉温は一時的に40.5℃となり, 10分後には38.5℃に下り, 再び39℃とわずかに上った.この現象は暗黒条件下と同様な傾向にあった.空気温度40℃, 相対湿度80%において照明した場合, 葉温は41℃となり, しだいに39℃に下った.空気温度40℃で, 湿度40%に下げると同時に葉温は一時的に35.5℃に下り, 再び37℃に上り, 特異的な波形を描いた.この波はしだいに消失した.空気温度30℃においては, 照明によって葉温は5.5℃上昇して34℃となった.相対湿度を40%に下げると葉温は32.5℃に下り, さらに33.5℃に上り, 再び32.5℃と下って波形を描いた.この波は時間経過とともに消失した.空気温度20℃においては, 照明によって19℃の葉温は24℃に上昇した.しかし相対湿度を40%に下げても葉温はほとんど変化しなかった.このように葉温に対する湿度の影響は高温条件で著しかった.
以上のように, 葉温と空気温度との間には明らかに差異があり, しかも葉温は空気温度, 光 (輻射) , 湿度に著しく影響されることが認められた.このことは, 植物反応に対する温度の影響を解析する場合, 空気温度だけを指標とすることには必ずしも満足できない場面があり, 葉温など, 植物体温を考慮すべきことを示唆している.